NEWSニュース

2016/03/29 | KAJIMOTO音楽日記

●華麗なるフィラデルフィア管・来日を前に Vol.1 ―― 1月カーネギーホール公演レポ


桜が咲き始め、ようやくあたたかい気候が安定してきましたね。

さて、「華麗なるフィラデルフィア・サウンド」でお馴染みの名門フィラデルフィア管弦楽団が6月初旬に来日します。
率いるは、才能あふれる若手が大挙する現代の指揮者界にあって、その筆頭の一人、2012年から同団の音楽監督を務めるヤニック・ネゼ=セガンです。

彼らの来日まで、様々な話題を連載していきたいと思いますので、予習その他になれば。どうぞお楽しみに。

最初は、フィラデルフィア管の「今」ということで、1月に行われた同団のカーネギーホール公演のレポートです。ニューヨーク在住の音楽ライター、小林伸太郎さんに送っていただきました。この日には、日本公演でもとりあげるブルックナー「交響曲第4番」が演奏されました。
ちなみにフィラデルフィア管は、カーネギーホールでの公演を「ニューヨーク定期」のような位置づけで、年に2、3回行っています。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

フィラデルフィアは、電車に乗ればニューヨークから1時間半くらいで行ける距離にある。だからニューヨークの人間なら、その気になればいつでも本拠地で聴くことができるオーケストラの一つだと言える。そして本拠地のホールで地元のお客さんと一緒に聴くというのは、大変素敵な経験であることはわかっている(実は最近、マーラーの8番を彼らの本拠地で聴いて、それを身にしみて感じた)。
しかし、ツアーというものは不思議なもので、ニューヨークのような近距離でも、ましてや海外ツアーのような大規模なものだとなおさら、いつもとは違う団結力がアンサンブルに生まれたりして、地元とは一味違ったスペシャルな演奏になることも多い。ヤニック・ネゼ=セガンがフィラデルフィア管のシェフになることが決まってから初めてカーネギーホールで演奏したヴェルディの「レクイエム」も、そんな演奏会の一つだった。

1月26日、音楽監督ネゼ=セガンがフィラデルフィア管弦楽団と共にカーネギーホールに持ってきたのは、本拠地のヴェライゾン・ホールで3週間に渡って繰り広げられた、ウィーン特集のプログラムの一部であった。コンサートマスターが登場した後、いつもながら颯爽と舞台に現れるネゼ=セガン。喝采に応えて客席に向かっての挨拶も、爽やかだ。と思うや否や、突然場内にティンパニが響き渡った。フィラデルフィア管の首席ティンパニ奏者、ドン・リウッツィの澄み渡った響きは凄まじいほどにエネルギーに満ち溢れていて、ネゼ=セガンはずっこけそうになって指揮台の手すりにつかまったほどだ。呆けていた私は、一瞬今日は合衆国国歌が演奏されるのかと思ったのだが、もちろんネゼ=セガンは、ハイドンの交響曲103番「太鼓連打」の冒頭のジョークとして、転びそうになる演技をしたのだった。こういう「演技」を嫌味なくサラリとこなしてしまうのは、きっと彼には生来の洗練された劇的な感覚があるからなのだろう。ハイドンの演奏も、キリッとしたリズム感も軽快に、フィナーレの煽るようなもって行き方まで生命力に溢れていて、素晴らしい造形だった。

キリッとしたハイドンは、(同じ変ホ長調である)後半に演奏されたブルックナーの交響曲第4番の壮大なる演奏への、絶妙なプレリュードとなった。作曲家自ら「ロマンティック」と称したこの曲を暗譜で指揮するネゼ=セガンの指揮には、マジェスティックなフィラデルフィアのサウンドでホール全体を圧倒的に鳴らしながらも、聴く者を深い思索に誘う風通しの良さがある。



それにしてもこの曲、ソロやミニ・アンサンブルの多い曲である。フィラデルフィア管というと、どうしても弦の暖かいゴージャスなサウンドをまず思い浮かべるが---そしてこの日の演奏も、それを裏切らない底力ある響きだったのだが---、今回の演奏では、冒頭のホルンを始めとするブラス・セクションはもちろんのこと、アンダンテのオーボエやパーカッション、スケルツォのトリオの木管(そしてもちろん弦)の美しさなど、その他のセクションにも実に名手が多いことに、改めて気付かされた。
昨年1月末にフィラデルフィア管との契約を2021-22年シーズンまで延長したネゼ=セガンだが、彼らとの関係がますます充実してきたことが、冒頭から壮大なるコーダの深遠なる響きまで、決して過剰にならない各セクションの絶妙なバランスからもうかがえる。

レオポルド・ストコフスキーとユージン・オーマンディの長きに渡った時代に、「The Fabulous Philadelphians(ファビュラス・フィラデルフィアンズ)と呼ばれるようになったフィラデルフィア管。まさかの倒産の危機の時に白羽の矢が立てられたのが、ネゼ=セガンであった。今回の演奏は、彼のリーダーシップが4期目にしてそのファビュラス(素晴らし)さを活気づけ、新たな時代に向かわせていることを感じさせるものだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【チケットのお申し込みはこちらまで】
 

PAGEUP