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2015/05/22 | KAJIMOTO音楽日記

●来日公演に向けて / ロンドン響の現在(3)――ビシュコフとイザベル・ファウストの初共演

「ロンドン響(LSO)の現在」の連載、第3回目です。
しかし、つくづくLSOを振る指揮者、共演ソリストの陣容は充実していますね。もちろんそういうクラスのオーケストラだから、というわけですが、それにしても羨ましくてため息が出ます。
1月のラトル、3月のM.T-トーマスに続き、5月はビシュコフの登場!

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ロンドン交響楽団(LSO)は4月から6月末まで、「LSO国際ヴァイオリン・フェスティヴァル LSO International Violin Festival」と銘打った12回シリーズを開催している。コンサートのフォーマットはふだんと変わらないが、各公演にヴァイオリン協奏曲がプログラミングされ、最前線で活躍中のヴァイオリニストが招かれるという内容。シリーズはジャナンドレア・ノセダ指揮、レオニダス・カヴァコス独奏によるショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番(4月8日)で開幕、以後ギル・シャハム(ブリテン)、イザベル・ファウスト(ブラームス)、クリスティアン・テツラフ(ベートーヴェン)、ジャニーヌ・ヤンセン(メンデルスゾーン)、ジェームス・エーネス(コルンゴルト)、アリーナ・イブラギモヴァ(モーツァルト第3番)、ジョシュア・ベル(シベリウス)など、ヴァイオリン好きにはたまらないラインアップとなっている。

今回はそのシリーズより5月7日に行われたセミヨン・ビシュコフ指揮、イザベル・ファウスト独奏の公演についてレポートしよう。当夜のプログラムは、前半にブラームスのヴァイオリン協奏曲、後半はチャイコフスキーの交響曲第5番というカップリング。奇しくも、この日はブラームスとチャイコフスキー両者の誕生日(ちなみにブラームスのほうが7歳上)にあたるということで、不思議なめぐりあわせを感じた。




ビシュコフとファウストは今回が初共演ということだが、興味深かったのはビシュコフがブラームスとチャイコフスキーではっきり演奏スタイルを変えてきたことであった。ファウストはいつもながらのピュアで削ぎ落とされた音と、細部まで突き詰めた知的な解釈で、オーケストラに寄り添うようにソロを奏し、ビシュコフは彼女のそうしたアプローチを全面的に尊重し、小さめの弦楽編成かつヴィブラートも控えめで、室内楽的な音楽作りを徹底していた。第1楽章で驚かされたのはカデンツァ。実演では初めて接するブゾーニ作曲のカデンツァはティンパニの伴奏が入るモダニズムの響きで、いかにもファウストらしい選択といえよう。続く第2楽章ではオーボエ・ソロ(オリヴィエ・スタンキエーヴィッチ)が冒頭の主題を甘美に奏で、ブラームスの抒情性を存分に引き出していた。ハンガリー風の第3楽章も快速なテンポで重厚にならず、独奏とオーケストラが一体となった切れ味の鋭い演奏。ファウストがアンコールにクルタークの「Doloroso」を弾いたのは、ハンガリーつながりだったのだろうか。




後半のチャイコフスキーの交響曲第5番ではオーケストラは大編成に戻り、前半の抑制された室内楽的な響きから一転して、LSOの輝かしいフルボディのサウンドが立ち上がった。ビシュコフの指揮の大きな特徴は、声部間のバランスへの配慮、そして大小のフレージングをていねいに形作ることで音楽の全体像を構築していく手腕だと思うが(それはブラームスでも同様)、それによって力で押すタイプの勢いではなく、自然な推進力が生まれるのだ。交響曲第5番もまさにそうした演奏であり、全体的にはかなり速めのテンポ設定ながらけっしてせわしくなく、各セクションの連結やフレーズの加速、減速もまるで音楽の内なる流れに従うかのように展開されていく。ビシュコフといえばワーグナーやR.シュトラウスの音楽を得意とするが、チャイコフスキーでもクライマックスの盛り上げ方ではワーグナーを思わせる部分もあり、とりわけ第2楽章の盛り上がりとそのあとの夢見心地のコーダが印象に残った。終楽章ではLSOの若き金管隊およびティンパニがたっぷりかつ勇壮に鳴らし、バービカン・ホールがいつもより音響の良いホールに聴こえたほどであった!

ビシュコフは現在、BBC交響楽団のGünter Wand Conducting Chairというポストに就いているため、LSOへの客演は多くないが(今回は3年ぶり)、個人的にはぜひ今後も招いてほしい指揮者No.1である。


文: 後藤 菜穂子(音楽ジャーナリスト/在ロンドン)



<ロンドン交響楽団 公演情報>
指揮: ベルナルト・ハイティンク
ピアノ: マレイ・ペライア
ソプラノ: アンナ・ルチア・リヒター

2015年9月28日(月) 19:00 サントリーホール
モーツァルト: ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
マーラー: 交響曲第4番 ト長調
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