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2014/10/03 | KAJIMOTO音楽日記

●テツラフ・カルテット来日! ―― 日本ツアー開始前にちょっとロンドン公演レポを




結成20年にして初来日!現代最高のヴァイオリニストのひとり、クリスチャン・テツラフが率いる、待望のテツラフ・カルテットが来日しました。
日本公演は10/4(土)川西・みつなかホール、10/6(月)名古屋・宗次ホール、10/7(火)東京・紀尾井ホールです。

9月25日にロンドンで行われた公演のレポートが届きましたので、ぜひお読みください!

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近年、弦楽四重奏の世界は、アルバン・ベルク四重奏団や東京クヮルテットなどの有名グループの引退に伴い多様化しているが、そうした中でも特に顕著な存在なのは、ソリストとして活躍している弦楽器奏者たちが結成しているグループである。その代表として、アルカント・カルテット、quartet-lab、そして意外にも今回が初来日となるテツラフ・カルテットが挙げられよう。
 そのテツラフ・カルテットを9月末にロンドンのウィグモア・ホールで聴いたが、最近聴いた弦楽四重奏団の中でも、もっともダイナミックかつ刺激的なグループだという強い印象を持った。このカルテットの特色はやはりリーダーであるクリスティアン・テツラフの個性的なアプローチがしっかりと浸透していることだろう。それもそのはず、彼らはすでに20年もともに演奏しており、それぞれ名手かつチーム・プレイヤーでもある??第2ヴァイオリンのエリーザベト・クッフェラートは元バンベルク響のコンサートマスター、ヴィオラのハンナ・ヴァインマイスターは普段はチューリヒ歌劇場コンサートマスター、そしてクリスティアンの妹ターニャ・テツラフはドイツ・カンマーフィルの首席チェロ奏者としても知られている。

 当夜のプログラムは、モーツァルトの弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421、ヴィトマンの《狩りの四重奏曲》、そしてシューベルトの最後の弦楽四重奏曲第15番ト長調D887であった(日本ツアーでも取り上げるプログラム)。モーツァルトの四重奏曲といえば上流階級のサロンで優雅に演奏されるイメージがあるかもしれないが、テツラフ・カルテットの演奏は冒頭のフレーズからそうしたイメージを打ち破る劇的でコントラストに富んだもので、聴き手をぐいぐいと曲の内面世界に引き込む。ヴィブラートは控えめに用い、その分右手のアーティキュレーションによって和声進行やリズムを強調する。これは後半のシューベルトにも共通していることだが、彼らはとにかくどんなフレーズもけっして流さず、一つ一つのフレーズがどこへ向かうのかを明確にし、曲をきわめて立体的に組み立てる。その結果、聴衆も、和声やフレーズの変化により注意深く耳を傾けるようになるのだ。

 イョルク・ヴィトマン(1973年生まれ)の《狩りの四重奏曲》は、もともとアルディッティ弦楽四重奏団のために書かれただけあって、たった12分の曲ながら、密度の濃い挑発的な作品である。初めて聴く方もいると思うので、なるべくネタをばらしたくないのだが、シューマンの《パピヨン》から取られた狩りのリズムのモティーフが徐々にグロテスクに解体されていくという内容で、あっと驚く仕掛けもあるのでお楽しみに。このフィジカルな要素の強い曲を四人は文字通り火花を散らしながら見事に弾き切り、客席からは多くのブラボーの歓声が上がっていた。

 こうしたヴィトマンの曲のあとに聴くと、シューベルトもこれまでとは違って聴こえてくる。テツラフ・カルテットはモーツァルト同様、シューベルトにおいても、表面的な抒情性よりも曲に秘められた激しさを際立たせた解釈を見せ、ときに胸をえぐられるほどだった。とりわけ強弱の振幅が広く、冒頭の静謐なトレモロからクライマックスにおける最強奏まで、起伏に富んだダイナミックなシューベルトを聴かせた。

 テツラフ・カルテットの演奏はきわめて密度が濃く、聴き手に対しても高い集中力を求めるものであるが、その分発見も多く、知的にも感情的にも深く満たしてくれる刺激的な体験であった。


(ロンドン在/後藤菜穂子)




<テツラフ・カルテット 来日スケジュール (2014)>

■10月4日(土) 15:00 大阪/みつなかホール 【プログラムA】
【問】みつなかホール 072-740-1117

■10月6日(月) 18:45 名古屋/宗次ホール 【プログラムB】
【問】宗次ホールチケットセンター 052-265-1718

■10月7日(火) 19:00 東京/紀尾井ホール 【プログラムC】
【問】紀尾井ホールチケットセンター 03-3237-0061


【プログラムA】
モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K.421
ヴィトマン:狩りの四重奏曲
シューベルト:弦楽四重奏曲第15番 ト長調 D887

【プログラムB】
シューベルト:弦楽四重奏曲第15番 ト長調 D887
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番 イ短調 op.132

【プログラムC】
モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K.421
ヴィトマン:狩りの四重奏曲
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番 イ短調 op.132


テツラフ・カルテット プロフィール

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