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2014/03/07 | KAJIMOTO音楽日記

●【スペシャル・インタビュー】五嶋みどり、メンデルスゾーンを語る ~ゲヴァントハウス管との共演、まもなく!




リッカルド・シャイー&ゲヴァントハウス管弦楽団の来日が、日に日に近づいております。
先日は現地ライプツィヒから、彼らの最新の演奏動画をお届けしましたが(こちら)、本日の“ゲスト”は、ソリストとして彼らの日本ツアーに参加するヴァイオリニスト、五嶋みどりです。
かつてメンデルスゾーンに率いられた楽団とともに、メンデルスゾーンの代表作を共演する五嶋みどりに、公演への意気込み、演奏曲目、ゲヴァントハウス管との関係、最近の活動について、たっぷりと語ってもらいました。
早速どうぞ!


***


<そのシンプルさゆえ、「メンコン」には弱点や恐怖心を隠す場所がありません>


――久しぶりの日本での協奏曲公演とあって、多くの方がみどりさんの演奏を心待ちにしていると思います。

私自身、とても楽しみです。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を日本で弾くのは約10年ぶりなんですよ。


――「メンコン」ことメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、ソロ・ヴァイオリニストにとって避けては通れない名曲中の名曲ですが、みどりさんにとってはどのような存在なのでしょうか?

この作品を知らなかった頃のことを思い出せないくらい身近な存在の曲です。私も「メンコン」に取り組ませてもらえる日を夢見る多くのヴァイオリンを習う子供たちのうちの一人でした。もう30年以上昔の話ですけれども。メンコンを習わせてもらえるということは、ある種の特権とステータスだと思っていましたし、まるで、この作品を学ばせてもらえるということが「成長の証」とでも解釈されていたように感じます。先生(私の場合は母に習っていたので親)の「お許し」を得てやっと楽譜を手にすることが出来る、というのは、何か「鳥居をくぐる」ときに感じる神聖な気持ちがして、なんとも言えない天に舞い上がったような気分になったものです。




――演奏者にとって、この協奏曲の奥深さはどのような点にあると思われますか?

他の偉大な作曲家と同じようにメンデルスゾーンも彼独特の「声」を持っていますが、古典主義でありながら、甘い感じが情熱と結びついている点が特徴で、この曲の冒頭のメランコリックなメロディー(第1主題)は、何度弾いてもいまだに難しさを感じてしまいます。メロディーがあまりにもシンプルであることと、もう一つの理由は、ホ短調という調性にあると思われます。音程の感覚に対するフレキシビリティーも必要とされますから。数あるヴァイオリン協奏曲の中でも、最も愛され、またヴァイオリニストには最も恐れられているオープニング・メロディー。そのシンプルさゆえ、弱点や恐怖心を隠す場所がありません。


――最近はこの「メンコン」をどのような頻度で演奏なさっているのでしょうか。

若かった頃には、この曲を色々なオーケストラや指揮者と一緒によく演奏しましたが、1992年からしばらくの間、特に理由があったわけではなく、この曲から離れていた時期がありました。2002年12月のサンフランシスコ響の定期演奏会で演奏して、それからベルリン・フィルとライブ・レコーディングも行っています。


<未だ確固たるクラシックの本質がゲヴァントハウス管に存在することを全身で感じます>


――今回はマエストロ・リッカルド・シャイーの指揮でゲヴァントハウス管と共演なさいますが、どのような心境でしょうか。「メンコン」を世界初演したのは、メンデルスゾーンが楽長を務めた時代のゲヴァントハウス管ですね。

ゲヴァントハウス管は「シンフォニー」「オペラ」「宗教曲」を幅広く提供する、類のないオーケストラとして知られています。あらゆる面でオーケストラの最高の地位にあるゲヴァントハウス管と共演できることを嬉しく思います。メンデルスゾーンはもとより、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、チャイコフスキー等の作品の初演を手がけたのが頷ける彼らの演奏に触れる度、私は未だ確固たるクラシックの本質がそこに存在することを全身で感じます。


――ゲヴァントハウス管とは過去にも共演しているということですね?

はい。ゲヴァントハウス管弦楽団とは何度か共演をしています。一番最近では、2013年4月にライプツィヒで、ペーテル・エトヴェシュの「DoReMi」をケント・ナガノの指揮で演奏しました。この曲はロサンゼルス・フィルとゲヴァントハウス管とBBCプロムスが私のために共同委嘱をした作品です。これまでの長い歴史の中で数多くの作品を初演してきたオーケストラらしく、音作りがしっかりとしていると思いました。この作品の初演はロサンゼルス・フィルだったのですが、2回目でしたから、彼らと一緒にこの作品の歴史をスタートすることができて幸せに感じました。


<将来の世代に「現代曲」を伝えていくことは非常に大切なことです>



――現代音楽にも積極的に取り組んでいらっしゃるのですね。最近興味をもたれ、さらに理解を深めてみたいと思っていらっしゃる作曲家がいたらお教えいただけますか。


常に色々な作品、作曲家に興味があって、どんどんその数が増えていって時間がいくらあっても足りません。これまで何度も演奏をした曲でも、毎回のように新しい発見があり、さらに掘り下げてみたいという気持ちになりますし、新しく挑戦する作品にも魅力を感じます。
昨年(2013年)に20世紀に生まれたヴァイオリン・ソナタを集めたCDをリリースしたのですが、古典とは違い、作曲家が生きた時代の延長線上に今の私たちが生きているという感覚があって、共感する部分が多いと改めて思いました。
また、現在ヴァイオリンの名曲と言われている作品もできたときは「現代曲」だったわけで、私も現代を生きる一人のヴァイオリニストとして、将来の世代に「現代曲」を伝えていくことは非常に大切なことだと思っています。そういう意味もあって2014年10月には東京で現代曲のリサイタルを行います。
ヴァイオリンのために書かれた作品は沢山ありますし、これからも良い作品が生まれてくると思うので、ますます時間がなくなりますね。


<自分がコミュニティーの一員であることを自覚し、いかに貢献できるかを考える力が現代の音楽家には求められていると思います>


――演奏にお忙しい中でも、NPOのお仕事などを通し、日々社会貢献をされている五嶋さんですが、現代において音楽を伝えていくとことにはどのような意味があるとお考えでしょうか。


人と人とのつながりが希薄化している現代社会において、音楽は、コミュニケーションを促進する核心的な役割を担うものと考えます。社会とは相互理解の基盤によってつながりが生まれ成り立つものだと思うのですが、グローバリゼーションが進んだ現代社会では、コモングラウンドを見つけるのが非常に難しいので、言葉を使わずに‘コミュニケーション’の元となるコモングラウンドをセットアップできる可能性があるという意味で、音楽の潜在的な価値は、複雑化した現代社会において、ますます高くなっていると思います。


――コモングラウンドをセットアップするために、具体的にはどのような活動をなさっているのですか?

音楽のコモングラウンドのセットアップ機能を働かせるには、まず音楽をコミュニティーに浸透させていくことが大前提となります。そのためにはアーティスト側から積極的にアプローチすることが大切です。そういった意味でもコミュニティー・エンゲージメント活動ができる音楽家が求められていますが、実践の場が限られていて、十分にノウハウを学ぶことはできません。活動基盤も必要ですから、簡単に始められることでもありません。私は微力ですが、これまで20年以上、コミュニティー・エンゲージメント活動を行ってきましたから、それなりの経験とノウハウを次世代にも伝えていくことが先駆者の役割だと思っています。


――南カリフォルニア大学ではそういったコミュニティー・エンゲージメント活動についても教えていらっしゃるのでしょうか。

「音楽が世界平和をもたらす」とよく言われますが、「音楽」が世の中を「平和」にするのではなく、音楽がもともと人間の中に存在している感情をパワーアップさせ、感情に働きかけて、世の中の見方を変えるのです。人の感情に影響を与える音楽をコミュニティーに浸透させていくには、音楽家の努力も必要です。技術の習得だけにとらわれず、いろいろなことに興味を持ち、挑戦し、視野を広げて、自分自身がコミュニティーの一員であることを自覚し、コミュニティーにいかに貢献できるかを考える力が現代の音楽家には求められていると思います。というようなことを教鞭をとっている南カリフォルニア大学の私の生徒たちには教えるだけではなく、実際に私と一緒にコミュニティー・エンゲージメント活動を行う機会を作っています。


――興味深いお話、有難うございました。最後に、今月の公演へ向け、聴衆へのメッセージをお願いします。

メンデルスゾーンも指揮をしていた伝統あるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団と、メンデルスゾーンの協奏曲を演奏することを楽しみにしています。
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の最大の特徴でもある、万人にとって忘れられないシンプルな冒頭のメロディーが、情感に流されながらいよいよ歓喜のスケールに辿り着くまでを、十分に皆様にお伝えしたいと思っております。





<五嶋みどり 公演情報2014>
共演:リッカルド・シャイー指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

■2014年 3月18日(火) 19:00/川崎 ミューザ川崎シンフォニーホール
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年 3月19日(水) 19:00/大阪 フェスティバルホール
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960
*フェスティバルホール オープニングシリーズ

■2014年 3月21日(金・祝) 18:00/東京 サントリーホール
【問】カ ジモト・イープラス 0570-06-9960 ※完売

プログラム
メンデルスゾーン: 序曲「ルイ・ブラス」op.95
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64 (ヴァイオリン:五嶋みどり)
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番 ニ短調 op.47

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