| バリトン
生活作法ということを聞いてぼくはびっくりした。
猫には猫の生活作法があり、犬には犬の生活作法があるだろう。そこでぼくはこんな詩をかいてみた。
合唱
木は黙っているから好きだ
木は歩いたり走ったりしないから好きだ
木は愛とか正義とかわめかないから好きだ
ほんとうにそうか
ほんとうにそうなのか
バリトン
見る人が見たら
木は囁いているのだ ゆったりと静かな声で
木は歩いているのだ 空にむかって
木は稲妻のごとく走っているのだ 地の下へ
木はたしかにわめかないが
木は
愛そのものだ それでなかったら小鳥が飛んできて
枝にとまるはずがない
正義そのものだ
それでなかったら地下水を根から吸いあげて
空にかえすはずがない
合唱
若木
老樹
ひとつとして同じ木がない
ひとつとして同じ星の光のなかで
目ざめている木はない
木
ぼくはきみのことが大好きだ
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バリトン
人には、人の生活様式があり、
その様式をスタイルと呼ぶ。
では、私の生活作法をお教えしよう。
よくねむること
よく歩くこと
ぼんやりしていること(みんないっしょに美しくぼけましょう)
合唱
星の光
野の花
さかまく地平線
倒立する地平線
帽子の下に顔があり
ドアをあければ人がいる
雪にきざまれた
鳥の羽
小動物の足跡
秋の夕陽の落下速度
春のおぼろ月
バリトン
「時が過ぎるのではない
人が過ぎるのだ」
と
ぼくは書いたことがあったっけ
その過ぎてゆく人を何人も見た
ぼくも
やがては過ぎて行くだろう
合唱
眼が見える
いったい
その眼は何を見た
バリトンと合唱
「時」を見ただけ
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