プラハ室内管弦楽団は、オーケストラのメンバー全員が調和をとるためには欠かせない指揮者を置かずに演奏するという、チェコのアンサンブルの中だけでなく、世界的にも非常に珍しいスタイルを誇っている。18世紀後期の古典派最盛期の手法を除くが、楽器編成が大きい場合でも、指揮者の棒ではなく、アンサンブル全体でお互いの演奏者の役割をそれぞれに感じながら音を結びつけている。楽器編成は、弦楽四重奏の倍数(ヴァイオリン12、ヴィオラ4、チェロ4、コントラバス2) に、木管六重奏(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット) の2倍の数とティンパニから成り立っている。
チェコスロヴァキア放送交響楽団の各楽器の首席奏者たちが集まり、新しいプログラム作りにふさわしい小さなアンサンブルを創設した時から、プラハ室内管弦楽団の歴史が始まった。その後、主に古いボヘミア音楽に焦点を当てるようになり、1951年10月、アンサンブル最初のレコーディング、カレル・スタミツ(カール・シュターミッツ)作曲のオーケストラ・カルテットをリリースした。翌1952年には有名なプラハの春音楽祭に出演、一躍チェコで最も人気の高いアンサンブルとなり、さらに、古い音楽を大編成で演奏する従来のやり方が廃止される傾向が増すにつれ、その名声は高まった。
レパートリーは、ハイドン、モーツァルト、初期のベートーヴェンなど古典派を中心に、バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディなどバロック盛期の作品も得意としている。一方、楽器編成は、メンデルスゾーンやシューベルトなどの初期ロマン派や、しばしば、ブリテン、オネゲル、プロコフィエフ、ストラヴィンスキーなどの20世紀の作曲家の作品にも対応している。
レパートリーに欠かせないのが、当然のことながら古きボヘミアの作曲家たちの作品で、ミフナ、ツェレンカ、スタミツ、ベンダ、デュセック、ミスリヴェチェク、ヴァンハル、コジェルフ、ヴラニツキ−、レイハ、 ジロヴェク、ヴォリセックらを取り上げている。そのほか、ドヴォルザーク、ヤナーチェク、マルティヌーなどを得意とするのはもちろんのこと、数々の現代曲にも取り組み、多くの作曲家が彼らのために作品を書いている。
アンサンブルの需要が高まるにつれて、放送交響楽団のメンバーの活動との両立が難しくなり、必然的に、1965年、プラハ室内管弦楽団として独立。共産主義体制の崩壊後は、独自のマネジメント会社「PKO Agency Ltd.」を設立し、イジー・クローブが代表を務めている。
プラハ室内管弦楽団の半世紀に及ぶ印象的な演奏は、国内外のコンサート・シーンに際立った足跡を残してきた。平均して1年に約80回のコンサートを行っている。チェコの人々は、ルドルフィヌムのドヴォルザーク・ホールで開かれる年に5〜6回の定期公演や、国内各地での演奏を聴くことができる。このほか、チェコを代表する2つの音楽祭、プラハの春とプラハの秋には長年にわたってレギュラー出演している。
しかしながら、全体の約8割のコンサートを外国で行っている。ヨーロッパでは、ビアリッツ、ラインガウ音楽祭、ザルツブルク音楽祭などの音楽祭に登場、さらに、ラテン・アメリカには6回、アメリカ・カナダには14回、そして日本にも6回のツアーをしている。最近では韓国、マレーシア、シンガポールなども訪れ、非常に高い評価を得た。
50年の活動を通して数多くの録音を、スプラフォン、Denon、BMG、デッカ、テラークなどに残し、スプラフォン・ゴールド・ディスク、ウィーンの「鳩の笛」賞、フランスのACCレコード・グランプリ賞など、数々の権威ある賞に選ばれている。
プラハ室内管弦楽団の名前と演奏スタイルは広く行き渡っているが、指揮者を置くことを避けているわけではなく、ヴァーツラフ・ノイマンやゲルト・アルブレヒトとの録音や、さらには、サー・チャールズ・マッケラスの指揮で長期にわたり録音されたモーツァルト交響曲全集によって、指揮者たちとの非常に良い関係が証明されている。共演した有名なソリストとしては、エミール・ギレリス、パウル・バドゥラ=スコダ、アルトゥール・ベネディッティ・ミケランジェリ、ルドルフ・ブッフビンダー、サルヴァトーレ アッカルド、ヘンリク・シェリング、ヨゼフ・スーク、マキシム・ヴェンゲーロフ、バーバラ・ヘンドリクス、ハインリヒ・シフ、ウト・ウーギ、ボリス・ペルガメンシコフ、シュテファン・ヴラダー、ボザール・トリオらが挙げられる。 チェコを代表するソリストでは、ズザナ・ルージチコヴァー、イヴァン・モラヴェッツ、ズデニェク・ティルシャ、ヴァーツラフ・フデチェク、ミハル・カニュカらを迎え、そのほかに、音楽界の新鋭であるチェロのモニカ・レスコヴァ、ヴァイオリンのミリヤム・コンツェン、クラリネットのポール・メイヤー、トランペットのセルゲイ・ナカリャコフ、ガボール・ボルドクツキーらとも実りある共演を重ねている。多くのソリストにとってプラハ室内管弦楽団と共演すること、つまり、自分の譜面を演奏することはさておき、オーケストラをリードすることは、一つの挑戦といえる。しかし、ソリストがこの演奏方法を取れないときには、これまでにもよく見られたが、オーケストラを調和させる重要な役割はコンサートマスターに委ねられている。それゆえに、団員たちは、アンサンブルの演奏全体を明確に表現できる人物を非常に慎重に選ぶ。現在はアントニン・ウラディルがコンサートマスターを務めている。
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