| ラルス・フォークトは、ヨーロッパ、アメリカ、日本で2005年から2006年にかけてのシーズンに80回を超える公演を行ない、いま、もっとも注目を集めているアーティストの一人である。また、EMIクラシックスからは最近2つの録音がリリースされた。リサイタルや協奏曲、一流アーティストとの多彩な室内楽に取り組んでいるフォークトの活動にふれれば、ファンも批評家も、彼の演奏が「情熱を秘めた」「聴く者を惹きつける」「超越的な」(ザ・インディペンデント紙)と評される理由を納得できる。
2005年から2006年にかけてのシーズンもこれまでと同様に、ラルス・フォークトは世界の一流オーケストラ、著名指揮者と数多く共演している。ティーレマン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ハイティンク指揮ロンドン交響楽団、ギルバート指揮ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー、スラトキン指揮ドイツ交響楽団、テイト指揮セント・チェチーリア交響楽団、ブロムシュテット指揮NHK交響楽団、ハーディング指揮マーラー室内管弦楽団、ヤノフスキー指揮RSBベルリン、ティーレマン指揮ミュンヘン・フィルハーモニー等との共演した。また、リサイタルを望む声も年々高まり、今シーズンはロンドンのプロムスとウィグモア・ホールをはじめ、チューリッヒ、パリ、ニュールンベルグ、サラゴサなどの都市でリサイタルを行なった。室内楽演奏家としても高い評価を得ており、ザルツブルク、ルツェルン、フランクフルト、サンフランシスコ、ベルリンで様々なアンサンブルと共演する。ヴァイオリニストのクリスティアン・テツラフとのデュオ・リサイタルは今や広く知られるところとなり、このシーズンはエディンバラ、ルツェルン、武蔵野、東京、アメリカの4都市において開催した。フォークトの活動の中で、いろいろな意味で常にもっとも重要となるのは、ケルン近郊の丘陵地帯にあるハイムバッハで開催される、彼の主宰する室内楽音楽祭、シュパヌンゲン音楽祭である。体系的に室内楽が体験できることで毎年話題を呼ぶこの音楽祭に出演した演奏家には、クリスティアン・テツラフ、トゥルルス・モルク、ターニャ・テツラフ、ハインリッヒ・シフ、ザビーネ・マイヤー、ジュリア・フィッシャー、ダニエル・ホープ、キム・カシュカシャン、ダニエル・ハーディングら多数が名を連ねている。EMIへのブラームス・デュオ作品全集の録音は、シュパヌンゲンでライブ録音されたもので、2004年エコー・クラシック賞とドイツ・レコード賞を、いずれも最優秀室内楽録音部門で受賞した。2006年のシュパヌンゲン音楽祭は6月11日から18日にかけて開催される。その他にも、ラロックダンテロン、ザルツブルク、プロムス、ルツェルン、エディンバラの音楽祭への出演が予定されている。
北米でのラルク・フォークトの人気は、シーズンを重ねるにつれて飛躍的に高まっている。2005−2006シーズンは、ソロ・リサイタルをカンサスシティーとニューヨークのザンケル・ホールで、クリスティアン・テツラフとのデュオ・リサイタルをフィラデルフィア、プリンストン、ニューヨークのアリス・タリー・ホールで、協奏曲の公演をアメリカの5つの主要都市で行う。さらに、ウラディーミル・ユロフスキー指揮ロサンジェルス・フィルハーモニーとモーツァルトの協奏曲K.466を、ダニエル・ハーディング指揮シカゴ交響楽団とグリーグのピアノ協奏曲を、ヘルベルト・プロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団とグリーグの協奏曲を、ロベルト・スパーノ指揮ピッツバーグ交響楽団とモーツァルトのK.488を、そしてカーネギー・ホールでアラン・ギルバート指揮ストックホルム・フィルハーモニーとベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を演奏する。
2004年から2005年にかけては、タングルウッド音楽祭でのボストン交響楽団へのデビュー、チョン・ミョンフン指揮東京フィルハーモニー交響楽団との公演、ロンドンでのスティーヴン・イッサーリス(チェロ)他との室内楽コンサート、サー・ネヴィル・マリナー指揮セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ管弦楽団とのドイツ5都市へのツアー、クリスティアン・テツラフとの春のツアー、ヨーロッパ7都市でのリサイタル、パーヴォ・ヤルヴィ指揮シンシナティ交響楽団とのカーネギー・ホールでのコンサート、そしてシーズン最後の公演となった、作曲家でピアニストのトーマス・アデスとの共演、カティアとマリエールのラベック姉妹(ピアノ)との共演、そしてサー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニーとのストラヴィンスキー「結婚」の公演などが特に目を引く。また、このシーズンには、クリスティアン・テツラフとの室内楽公演を、ハイムバッハのシュパヌンゲン音楽祭に加え、ルートヴィヒスブルク、ラインガウ、ケンペン、タングルウッド音楽祭でも行った。
2003年から2004年にかけてのシーズンには、フォークトはベルリン・フィルハーモニーの初代レジデント・ピアニストを務めた。サー・サイモン・ラトルによって新たに設立されたこのポジションで、フォークトはベルリン・フィルをはじめ、同オーケストラの楽員によって編成された室内楽グループと共に、シーズン中5回の公演を行った。そのうちの4公演では、ショスターコヴィチ、ブラームス、リゲティ、バルトーク、ヤナーチェク、クルターグ等の室内楽を演奏した。フル・オーケストラとの共演では、ラトルの指揮でEMIに録音したベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を演奏した。同シーズンのその他の公演では、ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラとの11都市のツアー、ジェフリー・テイト指揮イタリア国立放送交響楽団やヘルベルト・プロムシュテット指揮ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ダニエル・ハーディング指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、クルト・マズア指揮ロンドン・フィルハーモニーとの共演などがある。北米では、ロリン・マゼールの指揮によるニューヨーク・フィルハーモニーへのデビューをはじめ、セント・ルイス交響楽団、インディアナポリス交響楽団、トロント交響楽団との共演や、クリスティアン・テツラフやスウェーデンのクラリネットの名手マルティン・フレストとの室内楽ツアーを行った。
EMIクラシックスの専属アーティストであるフォークトは、2006年1月にモーツァルト・ソナタ集の2枚組CDセットをリリースしている。また、サー・サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団やクラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルハーモニーとの共演で3つの協奏曲を録音し、ハイドンからムソルグスキーやラッヘンマン、シューベルト、ブラームスにいたる幅広いレパートリーによる7つのリサイタルを録音している。また、室内楽でも17の録音があり、そのうち15はシュパヌンゲン音楽祭でのライブ録音である。フォークトの最初の録音はヴァージン・クラシックスで、チェロ奏者のトゥルルス・モルクとの共演でショスターコヴィチ、ストラヴィンスキー、プロコフィエフの作品を録音した。フォークトがヴァイオリン奏者サラ・チャンと録音したフランスの作品によるアルバムを2003年EMIからリリースした。2004年のシュパヌンゲン音楽祭で制作された、ドヴォルザーク、チャイコフスキー、モーツァルト、ベルク、シェーンベルクの作品を収めたCD2枚もリリースしている。
ラルス・フォークトはこれまでジェームズ・コンロン、クリスティアン・ティーレマン、ザビーネ・マイヤー、ハインリッヒ・シフ、ヒュー・ウォルフ、レナード・スラトキン、ドナルド・ラニクルズ等のアーティストと共演し、さらに「フォースタス博士」を題材としたユニークな番組では、俳優のクラウス・マリア・ブランダウアーと共演した。北米では、セント・ポール室内管弦楽団、セント・ルークス管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団、ロサンジェルス・フィルハーモニー、ミネソタ管弦楽団、アトランタ交響楽団、ボルティモア交響楽団、ダラス交響楽団、デトロイト交響楽団、ヒューストン交響楽団、インディアナポリス交響楽団、モントリオール交響楽団、サンフランシスコ交響楽団と共演している。さらに、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団、ロンドン交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、トーンハレ管弦楽団、オスロ・フィルハーモニー、サンタ・チェチリア管弦楽団、フランス国立管弦楽団とも共演している。
ラルス・フォークトは1970年にドイツの小さな町、デューレンに生まれた。ルース・ヴァイスとカール=ハインツ・ケンマーリンク教授(ハノーヴァー)に師事。1990年のリーズ国際ピアノコンクールで2位に輝いて一躍注目を集め、ヨーロッパ、アジア、北アフリカ、北米で演奏活動するアーティストとなった。妻は作曲家のタチアナ・コマロヴァ。妻、一人娘と共にドイツ在住。
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