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ピアノ


ダン・タイ・ソン (ピアノ)
ピアノ
ダン・タイ・ソン
Dang Thai Son, Piano
Photo © 樋崎香
繊細な色彩豊かに音楽の真髄を語るピアノの詩人


 「ピアノにハンマーのあることを忘れさせるピアニスト」(仏ル・モンド)。ドビュッシーとラヴェルのプログラムでリサイタルを開いたダン・タイ・ソンに寄せられたこの評こそ、かつて大家ギーゼキングがピアニストの理想像として常に語っていた姿である。技巧の誇示や過剰な意匠とは無縁の自然な演奏からは、作品の本質がしっかりと豊かに伝わって来る。行間の魅力とも言うべき繊細微妙な美しさを湛えた音楽はまさに“詩”そのもの。西洋音楽の世界に1980年ショパン・コンクール優勝という形で登場したアジアの偉大な才能は、アジアの世紀とも言われる21世紀を迎えて、その存在価値をますます高めていくに違いない。
 CD=ビクターエンタテインメント


●プロフィール


 1958年ベトナムのハノイ生まれ。父は詩人、母はピアニスト。ハノイ音楽学校で母に学んだ後、モスクワ音楽院に留学。留学中の1980年、ショパン国際ピアノ・コンクールでアジア人として初の優勝を飾り、併せてマズルカ賞、ポロネーズ賞、コンチェルト賞も受賞してセンセーションを巻き起こした。以来、世界の40ヵ国以上を訪れてリサイタルやトップ・オーケストラとの共演を重ねている。日本にも1981年以来しばしば訪れ、着々と人気を高めている。最近では、2002年サカリ・オラモ指揮バーミンガム市響、2004年ジョン・ネルソン指揮パリ室内管弦楽団と日本ツアーを行い好評を博した。また、ダン・タイ・ソンの波瀾万丈の半生を追った書籍「ショパンに愛されたピアニスト」(ヤマハミュージックメディア)が出版され、注目を集めた。CDはビクターエンタテインメントからのショパン作品集をはじめ、ドイツ・グラモフォン、メロディア、CBSソニーなどからも数々の名盤がリリースされている。現在、国立音楽大学の招聘教授。カナダのモントリオール在住。


●コンサート評から


 彼のピアノを聴いていると、「打鍵」という言葉を忘れてしまうほど、彼の創出する響きに全てが包みこまれる。私が最も印象的だったのは、スクリャービン《ピアノソナタ第5番》。極度の集中力が必要な作品だが、彼はこの作品に自身の全てを注ぎ込み、彼の音楽の言葉を紡ぎ出していく。私がこれまで聴いた彼の音楽では経験したことのないような激烈な強音や恍惚の世界が繰り広げられ、すべてがドラマティックに展開し、聴衆を圧倒した。どんな作品に直面しても、オープンマインドで対話するピアニスト。改めてダン・タイ・ソンの演奏に魅了された。 (10月30日 紀尾井ホール)

道下 京子 (音楽現代 2005年1月号)


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